2013/02/04

米国ロースクール事情:出願者数減少

アメリカのロースクール出願者数(J.D.への出願)が減少傾向にある。
今年の9月から始まるロースクールへの出願者数は、今年1月時点で約30,000。
これは、昨年同時期に比べて20%ダウンなんだそう。また、2010年からは38%ダウン。
2004年には、100,000人が出願したものの、今年は最終的に54,000人程度になる模様。

ロースクールへの出願者数減少は、どこから来ているのか。
ひとつには、学費の高さがある。
2012年の平均学費(1年間)は、私大で40,500ドル(公立で23,600ドル)。
アメリカのロースクールは卒業に3年かかるので、卒業までにかかる学費総額は、121,500ドル!
1ドル=90円として、約1000万円。
ほとんどの学生が教育ローンを組み、卒業時には、125,000ドル(約1100万円)の借金を抱えているという。

アメリカで法律を学ぶには、ロースクールに行く必要があるが、これは大学院であるため、
一旦法律とは無関係の学問を大学の4年間で学び、その後ロースクールに行くことになる。
アメリカでは、大学全般の学費が高いため、4年制大学+ ロースクールに通うことは、
経済的にかなり大きな負担となる。

また、ロースクール卒業後には、卒業生のほぼ全員が、いずれかの州の弁護士試験を受け、
法律事務所や企業の法務部等で働く ことを目指すのだが、弁護士が飽和状態かつ不景気のあおりで就職難。
2011年の卒業生に関していうと、ロースクール卒業後弁護士資格を得た卒業生のうち、
卒業後9か月以内にフルタイムの職に着いたのは、実に卒業生の55%のみ。
私が以前通ったBoston Universityからも、先月、ロースクールの学長から卒業生宛に
「2012年の卒業生の就職の世話をしてほしい」というメールが届いたほど。

このような状況のため、ローンを組んでまでロースクールに通うことを躊躇する人が増えているのだろう。

それでは、日本の法科大学院ではどうかというと、学費1年間の平均は、私立で100万円前後、
公立で80万円。3年間私立に通っても300万円前後。アメリカの学費の高さがよく分かる。
就職率はどうか。司法試験合格者のうち、2割程度が就職できない状況という話だから、
アメリカよりはましと言えるか。
ただ、最近は、法曹資格を得ても、法律事務所等に就職できずに、いきなり独立して事務所を
構える弁護士もいるというから、このような方を含めると、数はもっと悪くなる。
また、日本の新司法試験は、法科大学院卒業後5年以内に 3回までしか受験できないという
回数制限があるため、試験を受けずに企業に就職する方もいることを考えると、
日本の司法試験制度及び法科大学院卒業者の就職もまったく楽観視できない状況だといえる。

 社会にとって、適度な法曹人口がどの程度なのかは、その社会のバックグラウンドによりけりで
一概には言えないのだろうが、多様な人材が法曹界に入りたいと思うように、大学側のコストの
見直し等考えてほしいと思う。

【関連記事】
WSJ: http://online.wsj.com/article/SB10001424127887323926104578276301888284108.html
NYT: http://www.nytimes.com/2013/01/31/education/law-schools-applications-fall-as-costs-rise-and-jobs-are-cut.html?_r=0

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